🔍 日本神話の機密をポロリ『古語拾遺こごしゅうい』の訳


今回は、『古事記』に出てくる『天孫』邇邇芸命ニニギ『天の八股で猿田彦大神とエンカウント』の原形です。
こちらが初期バージョン。 そして『古事記』側で知られている神話は、ここから話を膨らませたことがうかがい知れるわけですが、 初期構想の時は、『伊牟迦布イムカフ』の存在はなかったようですね。 すぐ右下の  リンクから、『古事記』の該当記事 に飛べますので、両者を見比べてみると、どの部分をどう変化させたか? わかりますよ。   ・    ・ 
【原文と直訳】(猨田彦大神)

既而且降之間 先驅還白 有一神 居天八達之衢あめのやちまた 其鼻長七咫 背長七尺 口尻明曜 眼如 八咫鏡 即 遣從神 往問其名 八十萬神 皆不能相見

既に天孫降る間に 先駆還って白す 一神 天八達衢あめのやちまた居り 鼻長七咫 背長七尺 口尻明輝 眼八咫鏡如し 即ち 従神遣わし 其名問う 八十萬神々皆 該神見る能わず


於是 天鈿女命 奉勅而往 乃 露其胸乳 抑下裳帶於臍下 而向立咲噱 是時 衢神問曰 汝 何故爲然耶 天鈿女命 反問曰 天孫 所幸之路 居之者誰也 衢神對曰 聞天孫應降 故 奉迎相持 吾名是 猨田彦大神

於是に 天鈿女命アメノウズメノミコト勅奉じて行き 乃ち胸乳露わにし 裳帯臍下に抑え 向かって立ち咲き噱す 是時 衢神問う 「汝何故然るべき」 天鈿女命アメノウズメノミコト反問す 「天孫幸せる道 居る者誰ぞ」 衢神答える 「天孫降る聞き 迎え持つため来たり 我名は猨田彦大神なり」


時 天鈿女命 復問曰 汝應先行 將吾應先行耶 對曰 吾先啓行 天鈿女 復問曰 汝應到何處 將天孫應到何處耶 對曰 天孫 當到 筑紫 日向 高千穂 槵触之峰 吾應到 伊勢之狹長田 五十鈴川上 因曰 發顯吾者汝也 可送吾而致之矣

時に 天鈿女命アメノウズメノミコト再び問う 「汝先か 我先か」 答えて曰く 「我先に行くべし」 天鈿女アメノウズメ更に問う 「汝到るべき処何処か 天孫到るべき処何処か」 答えて 「天孫 筑紫 日向 高千穂 槵触峰に到るべし 我 伊勢 狹長田 五十鈴川上に到るべし」と 因って言う 「我顕わした者汝なり我送り届けるべし」


天鈿女命 還報 天孫降臨 果皆如期 天鈿女命 隨乞侍送焉 《天鈿女命者 是 猿女さるめ君 遠祖 以所顯神名爲氏姓 今彼氏男女 皆號爲 猨女君 此縁也》 是以 群神捧勅 陪從天孫 歴世相承 各供其職

天鈿女命アメノウズメノミコト還って報告し 天孫降臨果たして如期に行われる 天鈿女命アメノウズメノミコト随って侍送乞い 《天鈿女命アメノウズメノミコト 猿女さるめ君 遠祖 所顕神名以て氏姓とし 今其氏男女皆猨女君と号す 此縁より》 是により 群れる神々勅捧げ 天孫随従し 歴世相承し 各々其職供する

テーブルデザインピンク2行 なんか表現が古くありません? 私の頭では、意味がよくわからないです……
このままでは、よくわかりませんよね? 以下は、【原文】の現代訳バージョンになります。
古語拾遺こごしゅうい』第1部 (猨田彦大神) 「従五位下」官位 斎部宿禰廣成いんべのすくね ひろなり (奈良・平安時代)

その後、天孫が降臨される途中のこと、先導を務める者が戻って、報告されたときのことです。 『天の八つの分岐路あめのやちまた』に、一柱の神がおられます。この神は、鼻が七尺(約2.1メートル)もの長さで、背も七尺の高さがあり、口と尻は輝いており、目は八咫鏡のようでございました。 同行する神々が、その名を知るものは誰かいるか? と尋ねましたが、神々の中には直接知る者はおりませんでした。 そこで、天鈿女命が前に出ました。 彼女は胸を露わにし、着物をへその下まで下げ、大胆に立ち、笑いながら挑発しました。 その時、『天の八つの分岐路あめのやちまた』の神が尋ねました。 「なして、そげなことするですと?」 天鈿女命は逆に尋ねました。 「天孫が通る道を邪魔する奴ぁ誰だい?」 「天孫が降りるっちゅう聞きましたどん、迎えに来たですたい。ワシの名は猨田彦大神ですたい」 天鈿女命はさらに尋ねました 「ありがとよ! あんたが先に行くのか? アタイらが先に行くのか?」 「おいどんですたい」 「あんたは、天孫はどこに行くべきか知ってるのか?」 「天孫は筑紫の日向の高千穂の峰に行くですけんど、おいどんは伊勢の狭長田、五十鈴川の上流に行くですたい」 そして『天の八つの分岐路あめのやちまた』の神は言いました 「おいどんをここに呼び寄せたんはあんた方ですたい。おいどんを送り、導いてほしかとです」 天鈿女命は戻って報告し、天孫が降りたとき、すべてが予告通りに起こりました。 天鈿女命は、天孫の道にそのままお供をすることを願い出ました。 天鈿女命は、猨女君さるめのきみの遥かなる祖先にあたります。 その名は氏族の名として用いられ、現在その一族は皆、猨女君さるめのきみと称されております。 この由緒ある関係から、多くの者が天孫に仕え、代々その重要な役割と任務を忠実に果たしておられます。

📼 作者の斎部廣成いんべの ひろなり 一人語り風

こちらも、先に指摘したとおり、セリフが多いことが特徴ですな。 少しずつ、物語性が増してきた(今までの書に比べて『古事記』に似てきた)ことから、今回写したご先祖様の『古文書』は、今までより比較的新しい時代に、『近い先祖』によって書かれたものかもしれないですな。 ……ということは、飛鳥時代にあったとされる、古代の口承伝承や神話を集めたモノとされる『旧辞』などは、もしかしたら、我が斎部の先祖が記した可能性もありますな。 今回のエピソードは、『古事記』のほうにも同じ話がありますが、内容の類似性を見ると…… 稗田阿礼ひえだのあれの語る「口伝伝承」を書に記したという、あの序文の記述は、『古事記』の『日本神話』としての信憑性を高めるための架空の事実なのではないか? そのような疑いも出てくるわけです。 実際には、古代の口承伝承や神話を集めたモノとされる『旧辞』など、なんらかの原本を見ながら、太安万侶おおのやすまろが、中身に多少の拡張をかけながら、書き写していたのではないのですかな??

🎓 『古語拾遺』を理解する、分かりやすい解説

ちなみに、『古事記』の冒頭部分 では、

昔々、イザナギ様とイザナミ様という神様が、高天原の神様の命を受けて地上に降り、『天の浮橋あまのうきはし』から天の日矛あまのひほこで『おのころ島』をはじめとする大地を作りました。

と描写されてますが、この部分、『天津祝詞あまつのりと』では
天津祝詞あまつのりと】(原文と訳)

高天原にたかあまはらに 神留まり坐すかむずまります 神漏岐・神漏美かむろぎかむろみ命以てみこともちて 皇御祖神すめみおやかむ 伊弉諾大神イザナギのおおかみ

『高天原』にいてはる 『神漏岐かむろぎ』と『神漏美かむろみ』の命を受けて  皇族の祖神、たら言う 『伊弉諾イザナギ神』が地上に降りた後の話なんやねんけどな

このように言っています。 この命令を出したのは、高天原の『神漏岐かむろぎ』と『神漏美かむろみ』ですよ! と、その名前が分かったわけですが、この字は、実は間違っておりまして…… 正しい漢字と、その由来は? 【漢字の訂正】
✖ 神漏岐かむろぎ …… ⭕ 神路岐かむろぎ

(天孫降臨の時の天の八衢あめのやちまたのこと)

✖ 神漏美かむろみ …… ⭕ 神路見かむろみ

天の八衢あめのやちまたから下界を見た時のこと)

あれ? どこかで見覚えのある文字が出てきましたね! 神様の名前っぽくない発音の、あの、カムロギ・カムロミの由来は…… 【2人の名前の由来】

『天孫』邇邇藝命ニニギノミコト が、天からの指令を受けて『天の浮橋』を渡って地に降りることになった。 彼は『天の八つの分岐路かむろぎ』から『地上を見下ろしかむろみ』、当初は出雲へ向かおうとした。 ところが途中で猿田彦という神に出会い、高千穂へ目的地変更になった。

この部分から来ているのです。 ……ということは、1つ前の書では
天照大神アマテラスオオミカミ』と『高皇産靈尊タカミムスビ』の相談によって『天孫』が出雲に降りることになった
……となってますが、その〝天孫〟とは『イザナギ』のことなので、『イザナギ』の禊ぎから生まれたのが『天照大神アマテラスオオミカミ』で、その『天照大神アマテラスオオミカミ』の命令で〝天孫〟が出雲に行くことになって…… という、設定の矛盾が起こっている。 この話は本来、『イザナギ』の降臨のことを指す。 しかし、別な場面では『天孫』邇邇藝命ニニギノミコトとして書かれている。 矛盾発生!!   ・    ・  ですから『日本神話』とは、物語の元となる何らかのエピソードを元に『神武天皇』を何度も分裂させながら、様々な場面で英雄として登場させてる、架空のお話なのです。 ですから、イザナギという名前も、本当は神様の名前ではなく〝誘凪いざなぎ(イザ、凪に向かう!)から来ています。
  💻 関連LINK……『カタカムナ』第13句
だんだん、謎が解けてきたでしょう? だから、古代の『伝説』や『神話』などは〝従来の解釈〟をそのまま素直に信じてはいけない。 真実を、鋭く見抜く目を持たないと…… NEXT『古語拾遺』第1部 先祖の古文書の筆写 その15








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