🔍 日本神話の機密をポロリ『古語拾遺こごしゅうい』の訳


今回は、『古事記』に出てくる 『出雲の国譲り』の原形です。
こちらは初期のバージョンで、『古事記』に記されている神話は、このバージョンを基に話が拡張されたものですが…… 初期構想の時は、『天若日子アマノワカヒコ(素戔嗚尊)の存在はなかったようですね。 すぐ右下の  リンクから、『古事記』の該当記事 に飛べますので、両者を見比べてみると、どの部分をどう変化させたか? わかりますよ。   ・    ・ 
【原文と直訳】(出雲の国譲り)

于時 天祖 天照大神 高皇産靈尊 乃相語曰 夫 葦原瑞穗国者 吾子孫可王之地 皇孫就而治焉 寶祚之隆 當與天壤无窮矣 即 以 八咫鏡 及 薙草劍 二種神寶 授賜 皇孫 永爲天璽 《所謂 神璽釼鏡是也》 矛玉自從

于時 天祖天照大神アマテラスオオミカミ高皇産靈タカミムスビ尊は相語り 曰く 「葦原瑞穗国は 我が子孫が治めるべき地 皇孫 彼の地に赴き 治むべし 宝祚の隆盛 天地と共に無窮なり」と 即ち 八咫鏡やたのかがみ及び薙草劍くさなぎのつるぎの二種の神宝を皇孫に授け 永く天の璽とす 《所謂 神璽及び鏡はこれなり》 矛玉も従う


即 勅曰 吾兒視此寶鏡 當猶視吾 可與同床共殿 以爲齋鏡仍 以 天兒屋命 太玉命 天鈿女命 使配侍焉

即ち 勅して曰く 「我が子よ この宝鏡を見る時は 我を見るが如し 共に同床し 共に殿にいるように これを斎鏡とせよ」 仍って 天兒屋アメノコヤネ命 太玉フトタマ命 天鈿女アメノウズメ命遣わし 皇孫に侍らせる


因 又勅曰 吾則起樹天津神籬 《神籬者 古語 比茂侶伎ひもろぎ》 及天津磐境 當爲吾孫奉齋矣 汝 天兒屋命 太玉命二神 宜持天津神籬 降於葦原中国 亦爲吾孫奉齋焉 惟 爾二神 共侍殿内 能爲防護 宜以吾 高天原 所御齋庭之穗 《是 稻種也》 亦當御於吾兒矣 宜 太玉命 率諸部神供奉其職 如天上儀 仍 令諸神亦與陪從

因って 又勅して曰く 「我天津神籬かむひもろぎ起こし 天津磐境設け 我孫に斎奉るべし 汝 天兒屋命アメノコヤノミコト太玉命フトタマノミコト二神 天津神籬持ち 葦原中国に降り 亦我孫に斎奉れ」 惟って 二神共に殿内に侍り 防護能う 我高天原御斎庭穂《稲種なり》も 我子に御せよと 太玉命・諸部神々率い 天上儀如く奉仕せよとの命 諸神もまた随従せしめる


復勅 大物主神 宜領八十萬神 永爲皇孫奉護焉
仍 使大伴遠祖 天忍日命 帥來目部遠祖 天槵津大來目 帶仗前驅

復って 大物主神オオモノヌシノカミに勅し 八十萬神々率い 永く皇孫奉護せよ 仍って 大伴遠祖天忍日命オオトモノトオソノアマノオシヒノミコト来目部遠祖天槵津大来目クメベノトオソノアマノフツツノオオクメ遣わし 帯仗して前驅となるを命ず

テーブルデザインピンク2行 なんか表現が古くありません? 私の頭では、意味がよくわからないです……
このままでは、よくわかりませんよね? 以下は、【原文】の現代訳バージョンになります。
古語拾遺こごしゅうい』第1部 (出雲の国譲り) 「従五位下」官位 斎部宿禰廣成いんべのすくね ひろなり (奈良・平安時代)

その折、天の祖、天照大神と高皇産霊神が御協議になられました。 「葦原中国は、我らの子孫が治めるべき地である。皇孫はそこへ赴き、治めるべし。その神聖な治世は、天地存続の限り続くであろう」 そして、皇孫に八咫鏡と草薙剣、二つの神宝を授け、「これらは永遠の天の証」とされました。 (これらは「神の印と鏡」と呼ばれております) また、八尺瓊勾玉も併せて授けられました。 彼らは命じました。 「我が子よ、この神聖な鏡を拝む時は、それが我が存在なりと心得よ。寝室に置き、神聖な鏡として崇め奉れ」 そして、天児屋命、太玉命、天鈿女命を皇孫の側に仕えさせました。さらに、 「我は天津の神籬と天津の磐境を設け、それを我が孫のための祭りの場となす。天児屋命と太玉命の二神は、天津の神籬を葦原中国に持ち降ろし、また我が孫のために仕えよ。二人の神は宮殿内で仕え、守護せよ。また、我が高天原で管理する神聖な稲穂を我が子にも供えよ」 と仰せられました。 太玉命には、天上の儀式の如く諸部の神々を率いて務めを果たさせ、「他の神々も同行せしめよ」との御命がありました。さらに大物主神には、「八百万の神々を率い、永遠に皇孫を守護せよ」との御命が下されました。 そして、大伴の遠祖、天忍日命と中臣の遠祖、天槵津大来目を武装させ、先導させられたのでございます。

📼 作者の斎部廣成いんべの ひろなり 一人語り風

こちらも、英雄伝説のための、作り話でございますな。 作り話の特徴は、登場人物のセリフが多いことでございますな。 状況説明のために、セリフを入れたかったのでしょうが、もし『記録史』なら、隣でその話を聞いていたのでなければ、このようなセリフは知り得ないわけですからな。 『出雲の国譲り』に関しましても、日本の文化や歴史を理解するヒントだとして、多くの学者が神話や伝承に対して研究を重ねておりますが、真贋を見極める目は必要ですぞ。 神話としての性質上、今回のように、意図的に事実と異なる説明が混ぜられている可能性もありますので、ただ書いてあることを信じるのではなく、内容は多角的に分析しないといけないですな。

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