🔍 日本神話の機密をポロリ『古語拾遺』の訳
今回は、『古事記』の最初の方に出てくる 『天岩戸開き』の原形です。では『古事記』側ではどんな描かれ方か? すぐ右下の ⇲ リンクから、『古事記』の該当記事 に飛べますので、両者を見比べてみると、どの部分をどう変化させたか? わかりますよ。 ・ ・【原文と直訳】『天の岩戸開き』
於是 從 思兼神 議 令 石凝姥神 鑄 日像之鏡 初度所鑄 少 不合意 《是 紀伊国 日前神 也》 次度 所鑄 其状 美麗 《是 伊勢大神 也》 儲備既畢 具如所謀
思兼神の議に従ひ 石凝姥神に日像之鏡鋳造せしむ 初鋳造之鏡 少し意に合はず《是紀伊国日前神なり》 次に鋳造之鏡 其様美麗なり《是伊勢大神なり》 備既に整ひ 計画通り進む
爾乃 太玉命 以廣厚稱詞啓曰 「吾之所捧寶鏡明麗 恰如汝命乞 開戸而御覽焉」 仍 太玉命・天兒屋命 共致其祈焉
爾に 太玉命は広厚言葉詞啓して曰く 「吾が捧げる宝鏡明麗なり 汝命に応じたるものなり 戸開けて御覧あれ」と 仍って 太玉命と天兒屋命 共に祈り捧げる
于時 天照大神 中心獨謂 「比吾幽居 天下悉闇群神何由如此之歌樂 聊開戸而窺之」 爰 令天手力雄神引啓其扉 遷座新殿
于時に 天照大神心中独り言ふ 「我幽居して以来 天下全暗し 神々如何して此歌楽奏でるか 少し戸開けて覗いて見ん」 爰に 天手力雄神に命じて扉引き開けさせ 新殿に座遷す
則 天兒屋命・太玉命 以日御綱 《今 斯利久迷繩 是 日影之像也》 迴懸其殿
則ち 天兒屋命と太玉命は日御綱 《今「斯利久迷繩」 日影之像なり》回して殿に懸ける
令大宮賣神侍於御前 《是 太玉命 久志備所生神 如今世内侍善言美詞 和君臣間 令宸襟悅懌也》
大宮賣神《是太玉命と久志備生んだ神 今世内侍如く言葉美しく述べ 君臣間和ませ 宸襟を悦ばせる》を御前に侍らせる
令豊磐間戸命・櫛磐間戸命二神守衛殿門 《是 並太玉命之子也》
豊磐間戸命と櫛磐間戸命の二神《これもまた太玉命の子なり》に殿門の守衛を命ず
なんか表現が古くありません? 私の頭では、意味がよくわからないです…… |
思兼神の計画に沿った形で、石凝姥神には日の神の銅鏡を鋳造するという重要な任務が与えられました。 初めに作られた鏡は、残念ながら満足できない出来栄えで(この鏡は後に紀伊国の日前神として崇められることとなります) しかしながら、二度目に作られた鏡は、その形状も美しく(これは伊勢の大神として尊ばれることとなりました) ・ ・ 準備が整い、計画が順調に進行した後、いよいよ太玉命は、この輝かしい美しい鏡を天照大御神に例え、戸を開けてご覧になるようお勧めしました。 そして、太玉命と天児屋命は共に祈りを捧げたのでございます。
このとき、天照大神の側はご自身が隠れられて以来、世界は完全な暗闇に包まれているはずだとお考えになりました。神々がどうしてこんなにも歌や楽しみにふけっているのか、という疑問をお持ちになり、少し戸を開けて外を覗かれました。
📼 作者の斎部廣成 一人語り風
これは、周囲を封鎖して、降伏を呼びかけた後の『ホシ確保』の瞬間ですな。 「世界が暗闇に包まれているはずなのに、何故こんなに楽しんでいるのかしら?」 と、戸を少し開けて外を覗かれたときに、お縄となったわけですわ。 ・ ・ 皆で準備した儀式が効いたのか、本当にそのタイミングで空が晴れることとなりました。 ようやく出てこられた太陽の光なわけでしたから、その後は手厚くもてなされましてな、天照大神 を象徴する巨大な鏡は、新しく作られた殿堂へと移動されたのですわ。 日の神の綱を使って、あの八咫鏡 が殿堂に固定され、皆を見下ろすカタチに掛けられましたのです。 そして、二度と太陽がお隠れになることがないよう、大宮売神 という美しい言葉を操る神が、神宮内で毎日祝詞を唱えながら仕え、外では豊磐間戸命 と櫛磐間戸命 、そして太玉命 のご子息たちが、殿堂の門を守ることになりましたのですわ。 ・ ・ これらは、口伝伝承にて語り継がれたとされる『古事記』の該当箇所のカタチとは少々、似て否なるものではございますが、これが我が先祖の残した『古文書』の記録だったわけですな。 現場にいた者による、生の声でございます。 つまり、この古文書の内容こそが、『天岩戸』シナリオの原形なのでございます。
🎓 『古語拾遺』を理解する、分かりやすい解説
一番最初は…… 『日本神話』は作られた物語? んなわけないでしょ! という反応だった方も、積み上がってくる証拠に少しずつ、「おや??」と反応が変わってきてると思います。 私が『古語拾遺』に注目してるのはこれが理由なのです。 その場にいた人が書いたから、コレを調べることで、物語調に改変される前の『日本神話』の本当の姿が復元できる。 ・ ・こういう神話風の伝説は、聞き手の想像力を刺激して没入できるように物語調に書き、意図した文化や歴史を『語り部』の長老に語らせる。 長老が選ばれるのは、昔を知る唯一の『生き証人』が語れば、若い人は「そうだったんだね」となるから、カンタンに事実を書き換えられる。 意図した話を『語り部』の長老に暗記させ、長老がいつも唱え続け、村人全員の耳にたこができ、全員がもう聞き飽きたよ……となる頃には、他の人も全員、内容を覚えてしまい、その土地に伝承が植え付けられる。 そして何代も経つうちに、「口伝伝承」の物語はいろんなパージョンが乱立することになり、人によって、あるいは地域によって語る内容が微妙に崩れる。 何が本当か分からなくなり、「スゴそうな何かが昔あったらしい」というイメージだけが残る。