🔍 日本神話の機密をポロリ『古語拾遺こごしゅうい』の訳


今回は、『古事記』の最初の方に出てくる 『天岩戸会議』の原形です。
ところが今回は『古語拾遺』側のほうが『古事記』よりもはるかに詳しい! まるで、記録者本人がその場にいたかの如く。 『古語拾遺』で扱われてる話が、『古事記』のほうではどう描かれてるか? すぐ右下の  リンクから、『古事記』の該当記事 に飛べますので、両者を見比べてみると、どの部分をどう変化させたか? わかりますよ。   ・    ・ 
【原文と直訳】『天の岩戸』

爰 思兼オモイカネ神 深思遠慮 議曰 宜令 太玉フトタマ神 率諸部 神造和幣

思兼オモイカネ神 深慮し議して曰く 「太玉フトタマ神に諸部の神々を率いて和幣を造らせるべし」


仍 令石凝姥イシコリドメ神《天糠戸アメノヌカド命之子 作鏡遠祖也》 取 天香山銅 以鑄 日像之鏡 令 長白羽ナガシラハ神《伊勢国麻續祖 今俗 衣服謂之白羽 此縁也》 種麻 以爲青和幣 《古語 爾伎弖にぎて

仍って 石凝姥イシコリドメ神《天糠戸アメノヌカド命の子で 鏡の遠祖》に 天香山の銅を取らせ 日像の鏡を鋳造させる 長白羽ナガシラハ神《伊勢国麻續の祖 今の俗で衣服を白羽と呼ぶ この縁から》に麻を種させ 青和幣を作らせる 《古語は 爾伎弖にぎて


令 天日鷲アメノヒワシ神 與 津咋見ツクイミ神 穀木種殖之 以作 白和幣《是木綿也 已上二物 一夜蕃茂也》 令 天羽槌雄アメノハヅチ神《倭文遠祖也》 織文布 令 天棚機姫アメノタナバタヒメ神 織神衣

天日鷲アメノヒワシ神と津咋見ツクイミ神には穀木を種殖させ 白和幣《木綿 一夜にして茂る》を 天羽槌雄アメノハヅチ神《倭文の遠祖》に祝詞を書かせ 天棚機姫アメノタナバタヒメ神に神衣を織らせる


所謂和衣《古語 爾伎多倍にぎたべ》 令 櫛明玉クシアカルタマ神 作 八坂瓊 五百筒 御統玉 令 手置帆負テオキホオミ彦狹知ヒコサチ二神 以天御量《大小斤雜器等之名》 伐大峽小峽之材 而造瑞殿《古語 美豆能美阿良可みずのみあらが》 兼作御笠及矛盾

所謂和衣《古語 爾伎多倍にぎたべ櫛明玉クシアカルタマ神に八坂瓊の五百筒御統玉を作らせる 手置帆負テオキホオミ命と彦狹知ヒコサチ命に天の御量《大小斤雜器等の名》を用い 大峽小峽の材を伐り 瑞殿《古語 美豆能美阿良可みずのみあらが》を造り 御笠及び矛盾を作らせる


令 天目一筒アメノマヒトツ神 作雜刀斧及鐵鐸《古語 佐那伎さなぎ》 其物既備掘 天香山之五百筒真賢木《古語 佐禰居自能禰居自さねこじのねこじ》 而上枝懸玉 中枝懸鏡 下枝懸青和幣白和幣 令 太玉フトタマ命 捧持稱讚 亦 令 天兒屋アメノコヤネ命 相副祈 又

天目一筒アメノマヒトツ神に雜刀斧及び鐵鐸を作らせる《古語 佐那伎さなぎ》 これらの物が備わりし後 天香山の五百筒真賢木《古語 佐禰居自能禰居自さねこじのねこじ》を掘り 上枝に玉を懸け 中枝に鏡を懸け 下枝に青和幣と白和幣を懸ける 太玉フトタマ命にこれを捧持し 称讚させ また 天兒屋アメノコヤネ命に祈りを副わせる


令 天鈿女アメノウズメ命《古語 天乃於須女あめのをすめ 其神強悍猛固 故以爲名 今俗 強女謂之於須志 此縁也》 以真辟葛爲 以蘿葛爲手繦《蘿葛者 比可氣》 以竹葉飫憩木葉爲手草《今 多久佐たくさ》 手持着鐸之矛 而於石窟戸前覆誓槽《古語 宇氣布禰うきふね 約誓之意》 舉庭燎 巧作俳優 相與歌舞

天鈿女アメノウズメ命《古語「天乃於須女あめのをすめ」 この神は強悍で猛固な故にこの名があり 今の俗で強女を「於須志」と呼ぶ》に真辟葛を以て作り 蘿葛を手繦にし《蘿葛は比可氣》 竹葉や木葉を手草にし《今「多久佐たくさ」》 手に鐸の矛を持ち 石窟戸前に覆誓槽《古語「宇氣布禰うきふね」 約誓の意》を設け 庭に燎を舉げ 巧みに俳優を作り 共に歌舞を行う

テーブルデザインピンク2行 なんか急に詳細になってません? ところでこれ、何を説明してるんですか?
このままでは、よくわかりませんよね? 以下は、【原文】の現代訳バージョンになります。
古語拾遺こごしゅうい』第1部 『天の岩戸』 「従五位下」官位 斎部宿禰廣成いんべのすくね ひろなり (奈良・平安時代)

かつて天照大御神がお怒りになり、天の岩戸にお隠れになった際の出来事でございます。 その時、世界は真っ暗闇に包まれ、昼夜の区別もつかない大混乱に陥りました。 この事態に、重鎮の 思兼神オモイカネノカミ が、「これは大変なことが起こった!」と考え、 太玉神フトダマノカミ に様々な神々を率いて和幣のりひ(榊の枝にかけて神前に捧げる布)を作成するよう命じられました。 それから 石凝姥神イシコリドメ には、天香山あまのかぐやまの銅で日神の鏡を鋳造するように、長白羽神ナガハクヒメ には麻を植えて青い和幣のりひを作るように、そして 天日鷲神アメノヒワシ と 津咋見神ツクヤミ には、綿木を植えて白い和幣のりひを作るよう命令が下されました。 これらの植物は、一夜にして成長するとされております。 また、天羽槌雄アメノハヅチには祝詞の文面を書かせ、天棚機姫神アメノタナバタヒメ(天の棚旗姫)には神の衣を織らせる。 櫛名田比売クシナダヒメ (スサノオの妻)には弥栄ヤサカの勾玉と五百筒の御統玉を作らせ、 手置帆負彦テオキホオヒコ と 狹知二神サチニノカミ には、天の尺度で物を測らせ、大峽と小峽の木材を伐って、瑞々しい殿を建てるようにも指示されました。 天目一筒神アメノヒトツツボノカミには、様々な刀や斧、鉄の鐸を作るように命じられました。 これらの準備が整った後、天香山の五百筒のさかきを掘り上げ、その上の枝には玉を、中の枝には鏡を、下の枝には青と白の和幣のりひを掛けました。 太玉命フトダマノミコトがこれらを持って賛美し、天兒屋命アメノコヤネが祈りを捧げました。また、天鈿女命アメノウズメは、本葛で作った着物と葛の蔓で作った帯を身につけ、竹の葉や木の葉で作った手草たくさを持ち、鐸のついた矛を持って、岩戸の前で踊りを披露しました。 彼らは誓いの受け舟を掘り、中庭で火を焚き、巧みな演舞者たちが歌や踊りを披露したのです。

📼 作者の斎部廣成いんべの ひろなり 一人語り風

重い金の製造オモイカネノカミ』を担当していた技術の神(天鏡重工業の大社長)とは、現代で言う、経済産業界のドン! 経団連会長ですな。 そのドンからの直々の指示でしたから、皆本当に実行に移したわけですな。さながら、国家プロジェクトですわ!   ・    ・  準備はさらに本格的になりまして、木材を用いて瑞々しい 天照大神アマテラスオオミカミ の御殿を伊勢いせの地に建て上げましてな、 それから、この世に1つしかないツボ、鉄生成の大釜の神である 天目一筒神アメノヒトツツボノカミ という鉄釜の名工には、刀や斧、鉄の鐸などを作らせたのですな。 彼らは武器を携え、この地にやって来た王族の護衛たちでございますから、大陸の製鉄の技術を持ち合わせているのですわ。 そして、 石凝姥神イシコリドメ は、奇跡を起こす太陽の鏡作りですな。 特大の鏡は、 天照大神アマテラスオオミカミ の象徴となるものですから、とにかくデカイものを! との会長からの注文でしたな。 しかし、奇跡担当の職人も、そのような巨大なモノは過去に作ったことがないわけですから、技術の粋を注ぎ込んで作っても、最初に出来上がった鏡は少々小振りで、以前に作成した紀伊国きいのくにの 日前神ヒノマエノカミ のものと同じような出来栄えでございました。 しかし、それでは大きさが足りないとされ、再度作り直した鏡は、今度はなんとも美しい出来ばえとなりまして、これが新築の伊勢いせの大神宮に奉納されたのでございます。 後の三種の神器の一つとして名高い、あの八咫鏡やたのかがみのことですわ。   ・    ・  これらの準備が整いまして、天香山あまのかぐやまさかきの枝には、玉や鏡、和幣を飾りましてな。まるで七夕たなばたの際にささの葉に願い事を吊るすように、それはそれは見事なものでございましたわ。 そして、全てが準備が全て整いましたところで、 太玉命フトダマノカミ (巫女の皇女様)が天に向けて口上、祝詞を述べられましたのでございます。 「この輝く美しい鏡はまさに、太陽であるあなたのようだ」と自然界の太陽を讃え、「さあ、戸を開けてご覧になってください」と空に願ったのでございますな。 その横では、 天兒屋命アメノコヤネ も真の祈りを捧げ続けている。 〝天の小屋・屋根〟ということですから、この時初めて『屋根付きの神社』というものが建てられたのでございますな。 それまでは、祈祷台の上でお祈りする、野外コンサートの特設ステージで祈祷を行っておりましたが、今回ばかりは事情が違う! 本気度MAX! ということで、埼玉スーパーアリーナを急遽建てまして、 さかきの枝サラサラが 軒端のきばに揺れましてですな お星様キラキラを枝に飾る となりまして、 まるで一年に一度しか会えなくなってしまいました「太陽の姫君」に 「地上の人民代表の星」が、7月7日に祈りを捧げましてですな、金銀の民達(貴族も一般の平民も)もこの地に砂のように集結して祈り続けたわけでございますな。 この儀式の終盤には、日本舞踊の舞姫、 天鈿女命アメノウズメ が岩戸の前で、見事な舞を披露されました。   ・    ・  かき集めた民の数は『全員集合』だったわけですから、異様な熱気に包まれ、他の者たちも興奮してど派手な踊りをワチャワチャ始めましてな! 踊る阿呆に見る阿呆 どうせアホなら踊らにゃ損ソン! (原文は 〝阿波禮あわれ〟阿波踊りの起源) もうやけっぱちや! このまま死ぬかわからんから、どうせ死ぬなら踊らにゃ損ソン! とまあ、中庭で火を焚き、皆が入り乱れての歌や踊りもありましてな、

「ツルツル頭を叩いてみれば、文明開化の音がする!」 「ええじゃないか! ええじゃないか!」

のお祭り騒ぎとなり、その盛り上がりはまさに、宿泊学習の学生たちが夜通し遊ぶかのような賑やかさでございましたわ。

💻 関連LINK……『カタカムナ』第47首

🎓 『古語拾遺』を理解する、分かりやすい解説

『日本神話』の中でも有名なシーン、『天岩戸隠れ』に関する、『古語拾遺』バージョンです。 いきなり描写が詳細になったでしょう? この準備は当時、文字として記録されていた。それを書いたのが、斎部の先祖だった。
天羽槌雄アメノハヅチには祝詞の文面を書かせ
とあるから、この方のことでしょうか? 斎部氏は、天皇祭祀を行う氏族でしたし、文字が書ける神職でしたから。   ・    ・  作中に出てくるの神々の名は、本当は神様ではなく、天皇側近のことを指しているわけですが、『火山噴火』を神の怒りだと誤解し、その怒りを鎮めるための『鎮魂の儀』を国家プロジェクトレベルの本気モードで行っていたのです。 今の時代から見れば、笑われそうなドタバタぶりかもしれませんが、実は現代人もつい数十年前までは、地震は大ナマズが起こすものと信じていたし、雷が鳴ったらおへそをとられると信じてた。 わりと最近まで、こんな感じでしたから、当時の人の慌てぶりは、それだけ本気だったわけです。 NEXT『古語拾遺』第1部 先祖の古文書の筆写 その8








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