🔍 日本神話の機密をポロリ『古語拾遺こごしゅうい』の訳


『古語拾遺』の原文の構成は、

【原文の構成】


このようになってます。

【第1部】先祖の古文書の書き写し ですが、これは、想像以上に古い時代のものかもしれません。

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斎部一族は、神武天皇の時代から側近として遣えていた、創業メンバー。
中臣一族に次ぐ、特権階級の地位でした。

斎部氏の主な役割は、天皇祭祀、すなわち神に遣える儀式。
そのため彼ら氏族だけは、古くから文字の読み書きにも通じていました。

その頃の彼らは、中国語をそのまま使ったり、『アメリカ』→『亜米利加』のような、日本語の発音を強引に漢字で代用する〝表音文字〟としての、文字の使い方。(万葉仮名と言う)

一部の貴族は、外国との取引や、重要事項の記録保存、伝説の作成の必要があったので、日本に公式に文字が導入される前から、文字を使用できていたのです。

そのため、『古語拾遺』の〝先祖の古文書の書き写し〟の部分は、想像以上に古い時代の書き写しと考えられます。

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文字伝来についても、整理してみましょう。

日本に文字が伝来した(国民に広く普及した)のは、中国の影響を受けてのこと。
これは、学校で習ったとおりなのですが、なぜそうなったか? その理由までもご存知でしょうか?


テーブルデザインピンク2行 『遣隋使』・『遣唐使』によって、文字文化も伝来したからでは?
違います。直接的な理由は〝仏教〟の影響が大きく関わっています。 元々、外国王朝との交流を持っていた政府高官や貿易関係者たちなど、一部の人だけは以前から読み書きもできてました。 しかし、一般の人にも文字の読み書きが広まったのは、仏教伝来が直接の理由なのです。 それはなぜか?

当時は国策として仏教が全国に推進されていた。 そのため僧侶の身分は、一般人に手が届く中で、最高ランクの地位だった。 飛鳥時代の頃の日本は、農民、漁業、手工業者が中心で、その中で成り上がりたいと思ったら、仏門を志すのが一番良かった。 僧侶を目指して、仏教経典を読んだり、写経をするには文字の読み書きが不可欠。

  ・    ・  これが、一般の人への読み書きの普及を促したのです。 こうして文字が読める人が仏教の全国展開と共にドカッと増えたのですが、学校の授業では『仏教の伝来とともに、文字も伝わった』という表現にとどまります。 一般の人は、動機がなければ文字は覚えません。しかも、当時の文字は『中国語そのまま』なので、難易度が高すぎ! 歴史の裏には、その時代特有の 理由 があるのです。

📺 『古語拾遺』の原文と直訳

【原文と直訳】(伊奘諾・伊奘冉二神)

一聞 夫 開闢之初 伊奘諾イザナギ 伊奘冉イザナミ 二神 共爲夫婦

一聞、夫 開闢の初め 伊奘諾イザナギ伊奘冉イザナミの二神 共に夫婦となりて


生 大八州国 及 山川草木 次 生 日神 月神 最後 生 素戔鳴スサノオ

大八州国と山川草木を生む 次に日神と月神を生み 最後に素戔鳴スサノオ神を生む


素戔鳴スサノオ 常以哭泣爲行 故 令人民夭折 青山變枯 因斯 父母二神 勅曰 汝甚無道 宜早退去 於根国矣

然るに 素戔鳴神スサノオノミコト 常に泣き叫び 故に民夭折し 青山枯れ変わる 因りて 父母二神 勅して曰く 「汝 甚だ無道なり 辞して根の国へ退去せよ」

テーブルデザインピンク2行 なんか表現が古くありません? 私の頭では、意味がよくわからないです……
このままでは、よくわかりませんか? それでは、【原文】の現代訳バージョンもいってみましょう。

( ⇲ 新ウインドウで『古事記』該当部分へのLINKあり)

古語拾遺こごしゅうい』第1部 (伊奘諾・伊奘冉二神) 「従五位下」官位 斎部宿禰廣成いんべのすくね ひろなり (奈良・平安時代)

伝承によりますと、この国の始まりは、伊弉諾いざなぎ様と伊弉冉いざなみ様という、高貴なる神々のご夫婦から始まり、お二人の霊力から大八州国、すなわち我々が暮らすこの日本の国土が誕生したのだとか。 山々、川々、そして草木のすべても、彼らの霊力からの恵みによって生み出されたのだとか。 その後、このご夫婦は、日の神と月の神をお生みになられたそうです。   ・    ・  しかしながら、物語はここで一転いたします。 伊弉諾様と伊弉冉様の最後のお子様、素戔嗚すさのお様は常に涙を流し、その悲しみがあまりにも深く、人々の命を縮め、緑豊かな山々さえ枯れさせてしまったのだとか。 この様子を憂いたお二人の神々は、素戔嗚様に対し、この国を離れ、『根の国』へと退去するよう命じられました。

📼 作者の斎部廣成いんべの ひろなり 一人語り風

これは当家で代々、数世紀にわたって厳格に保存されてきた、先祖の『秘密の書』を書き写したものでございます。 この古文書は、ただの文献にあらず『日本神話』の構想段階における、設定や逸話までをも含んでおります。 これらは初期の『日本神話』の作成に従事していた当家内で受け継がれてきたもので、決してその存在は外に出してはいけないものでしたが、この貴重な書の存在を天皇に伝えるべく、私が筆写し、陛下に献上した次第でございます。

🎓 『古語拾遺』を理解する、分かりやすい解説

『日本神話』って、元々日本各地に伝わっていた『土地神話』をひとつにまとめあげたもの というイメージがなんとなくありますよね?
テーブルデザインピンク2行 イメージも何も『古事記』の冒頭にそう書かれてますよ! 稗田阿礼ひえだのあれ が語った内容を書き留めたって。
各地の『口伝伝承』も多少は参考にしたのは事実でしょうが、実際の歴史の流れはちょっと違います。 『日本神話』は、元々土地伝承されていた、日本古来の『神話』をまとめたモノと誤解 されてますが、実際はこの『古語拾遺』の先祖の書の方が先なのです! この『古語拾遺』は、斎部氏の先祖の残した古文書を拾って、書き写しているわけですが、ここで拾われた、斎部氏の先祖の残した古文書こそが『日本神話』の原形なのです。
テーブルデザインピンク2行 いきなりそんなこと言われても 信じられませんよ
歴史の流れとしては、こんな感じです。 彼ら『天皇側近』が書いたこの物語が、そのまま土地の〝語り部〟に降ろされ、その語り部が集落で〝毎日同じ話〟を繰り返す。そして、それが数代継承されるウチに、その土地の伝承として根付く。   ・    ・  【歴史の流れ】

1.天皇側近の貴族が『神話』の原形を作る 2.土地の〝語り部〟が、集落内で毎日同じ話を繰り返す 3.数代継承されるウチに、その土地の伝承となる 4.飛鳥時代に、物語として強化(リライト) 5.奈良時代に『古事記』と『日本書紀』にまとめられる

古代王朝の扱う『神話』は、政治的な権威と結びついているので、その内容は〝民間信仰〟を直接記録したものではないのです。 『ギリシア神話』にしろ『日本神話』にしろ、中身は〝政権〟に由来のある〝神話〟や〝英雄伝説〟を描く物語。 ですから、その物語の原形〟の方をポロリと流出させてしまった『古語拾遺』は、〝神話の偽物〟に見えるような粗さですが、この粗さこそが〝物語の原形〟の証拠なのです。 これをたたき台に、複数の時代にどんどん中身が練り上げられ、最終的に『古事記』のような壮大な話にまとまった。 あまりにも壮大な形に仕上がったものだから、『本物の神話を描いたもの』と誤解した研究者(江戸時代の本居宣長もとおりのりながとか)が、真面目な解釈を重ね、さらに誤解が拡大した。   ・    ・  『古事記』や『日本書紀』に登場する伊弉諾いざなぎ様とは、実は『神武天皇』がモデルなのです。

物語内では、威厳を高めるために〝本物の神様の名〟を拝借した〝役名〟で登場させ、伊弉諾いざなぎ神という名になってるものの、その実態は『神武天皇』がモデルの物語。

なので、全てを統べられる大王様のことを比喩的に表現するため、伊弉諾いざなぎ様によって、国土が生まれ、山々、川々、そして草木のすべても、彼らからの恵みによって生み出された。 こういう話の展開になっているわけです。 その背景にある思想は、『この世界のものは全て、天皇陛下のものである』というもの。   ・    ・  それを裏付ける証拠として、天皇陛下を讃える、平安時代のこんな詩があります。
今撰和歌集こんせんわかしゅう 源頼政の詠んだ詩】
君が代は 千尋ちひろの底の さざれ石の のゐる磯と あらはるるまで

【現代語訳】 天皇陛下の治める世の中は 広大な海の底まで広がる遠大さで 海底の細砂から海岸の鵜が見える景色まで 全ての風景や自然が天皇陛下のものなのです

これを見て分かるように、昔の天皇陛下の権力は、普通の人がイメージしてるよりはるかに強大でした。 この詩の背景には、作者から陛下への〝褒め殺し〟の可能性もありますが〝天皇陛下のおかげで我々が存在し、世の中の全ては陛下のものである〟という考え方そのものは、昔の時代に確かに存在していたことが分かります。   ・    ・  今回の『古語拾遺こごしゅうい』第1部 (伊奘諾伊奘冉二神)は、その伝説化の作業の初期形態。物語の構想段階の下書きが、意図せず流出してしまったもの。 陛下個人に宛てた個人的な手紙として、『先祖の古文書』を写し取ったら、意図せずそれが、古代日本の〝最高機密流出〟につながってしまった。 ……このような機密流出のポロリが、『古語拾遺こごしゅうい』が面白い理由なのです。 NEXT『古語拾遺』第1部 先祖の古文書の筆写 その3








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